声明・談話

《議長談話》安全保障関連法制の廃止を求めます

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2015.10.07

 戦後70年を迎えた今、日本は「戦争しない国」から「戦争できる国」への転換点に立っています。

 2015年9月19日、「平和安全法制整備法案」が参議院本会議で可決され、成立しました。この採決に抗議するとともに、安全保障関連法制の廃止を求めます。

 この間、国会前を含む各地の抗議行動に加え、大学など学問の拠点からも法律の廃案を求める動きが急速に広まりました。法案の議論に際しては、衆議院参考人招致で与党推薦の憲法学者を含め全員が違憲判断をしたと共に、歴代の内閣法制局長官や最高裁判所判事・長官経験者からも、違憲立法の明言がありました。しかしこれまでの政府の対応に、国会の内外において十分な議論を尽くし、憲法上の問題の整合性を取ろうとする姿勢は見られませんでした。広い抗議や批判の声、そして専門知の警告を無視することは、今後の民主主義に対して禍根を残します 。

 また、本法制の成立前に、米国との間で「日米防衛協力のための指針」の見直しが先行して合意されたことや、本法制の成立を前提とした防衛省内の内部資料が作成されたことも、大きな問題をはらんでいます。政府の方針が、主権者への十分な説明や国会での議論を行わずに決定されることは、議会制民主主義を軽視した行為との批判は免れえません。加えて、憲法違反との批判が大きいことへの合理的な説明もない一方で、これらが行われたことは、立憲主義そのものを破壊する行為であり、許されることではありません。

 集団的自衛権は60年以上、憲法に違反すると政府解釈されてきましたが、この間、安倍政権によって憲法に違反しないという変更が加えられました。これによって、日本が米国の侵略戦争に加担し、戦争当事者となる可能性が生じています。かつて大学は、多くの学生を戦地に送り、教育と研究を通じて日本の侵略戦争に加担しました。この痛恨の歴史を繰り返し、殺し殺される状況を作り出すことは二度と認められません。

 全国大学院生協議会は活動の目的として、「全国大学院生協議会規約」(1960年制定)第2条で、「大学院生の生活研究諸条件の向上、大学・大学院における大学院生の地位と権利の確立、向上および大学院生の共通の立場から、平和と民主主義の確立ならびに社会進歩をめざす」ことを掲げています。これは痛恨の歴史への反省に立つ日本国憲法の、国民主権・人権尊重・平和主義の原則と学問の自由や大学の自治を守り発展させる立場です。それゆえ、憲法や専門知の軽視を通じて、大学における教育・研究の前提となる「平和と民主主義」が踏みにじられることを断じて許しません。そして、「戦争しない国」から「戦争できる国」への転換により、今後、大学院生が戦争に加担させられることに、強い危惧の念を示します。

 以上より、大学院生の立場より、今後もさまざまな運動と連携していくことを表明するとともに、安全保障関連法制の廃止を求めるものであります。

2015年10月7日 全国大学院生協議会2015年度議長 藤村治

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