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全院協ニュース第254号を発刊しました

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2018.07.29

目次

  • 新旧役員挨拶
  • 全院協とは?
  • 2018年度大学院生の研究・生活実態アンケート調査
  • 2018年度第1回理事校会議報告
  • 編集後記

新旧役員挨拶

2018年度議長挨拶

 本年度、全国大学院生協議会(以下、全院協)の議長を務めさせていただきます、明治大学商学研究科の葛谷泰慣と申します。全国の大学院生の研究・生活環境を少しでも改善させていけるように、事務局のメンバーと共に一年間頑張って参りますので、是非全院協活動へのお力添えを頂きたく存じます。以下では、私の議長を引き受ける経緯と、全院協の活動が持つ意義について私の考えを述べさせていただいて、私からの挨拶とさせていただこうと思います。

 私は全院協の議長としては、少々イレギュラーです。それは、①事務局の経験が無い点と、②今年初めて 東京に進学してきたという点の2点においてそう言えるかと思います。全院協の議長は、それ以前に事務局で活動した経験のある方が務めるのが通例で、事務局経験の無い者が議長職を務めるのはほぼ初めてのことのようです。また、私は去年まで岐阜におり、今年東京に上京してきたという次第で、東京での運動に参加した経験も乏しく、現在の情勢についても十分に把
握できているわけではありません。

 そうした中で、私が議長職を引き受けさせていただいたのは、今年はそもそも事務局経験者がいなかったということと、それから私としても全院協の活動を少し でも支え来年度以降に引き継いでいきたいと思ったこと、これらが率直な理由になります。

 現在、大学院生は苦しい研究・生活環境のもとに置かれています。それは、客観的なデータからもそう言えます。OECDの資料によれば、日本の高等教育への公的支出のGDP比は加盟国中最下位であり、結果として日本の学費はデータのある国の中で 最も高い国の一つとなっています。加えて、大学院生には公的な給付制奨学金制度がいまだに整備されていません。

 こうした教育政策を背景に、後述するアンケートを通じて全院協には毎年、院生の切実な悩みが寄せられ ています。大学院生の研究・生活環境を良くしていくことは、喫緊の課題であり、全院協が活動していくことの意義は今日、より大きなものとなっているように感じます。

 ところで、全院協には、他の団体には無い強みがあります。毎年、全院協が行っている活動の中でも主要な2つの活動が、「大学院生の研究・生活実態に関するアンケート調査」と、調査を通じて明らかになった実態をもとに、関連省庁・政党・議員に対して政策提言・要請行動を行う「要請行動」です。この 2 つの活動は抽象化すれば、現状を的確に捉え、そうした結果を分析し、状況を改善す るために必要な方策を考え、そして行動する、ということになるのでしょうが、これは、あらゆる科学の方法と共通するものがあります。ですから、現役の研究者の集団である全院協は本来こうした活動に最も強みを持つ集団だと言うことができるでしょう。

 私に事務局の経験が無いなど、今までの議長の方々と比べれば頼りなく、至らない点も多々あるかと存じますが、それでも全院協の強みを自覚し、事務局メンバーともども、少しでも研究・生活環境をよくできるよう頑張っていきたい所存です。皆様に活動を支えていただきつつ、役割を果たしていけたらと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。

2018年度 全国大学院生協議会 議長 葛谷泰慣

前年度議長退任挨拶

 2017年度全院協議長を務めさせていただきました外山です。昨年度は大変お世話になりました。何というか、よく 1 年間全院協議長をやりきったな、と思うわけです。

 さて、私たちが声を挙げて叫んできた、高等教育予算の拡充、授業料無償化、給付制奨学金については改めて書く必要はないでしょう。大学院生や大学生はこれらの改革の当事者でありながら、改革の議論に参加することもできないわけであります。そんな馬鹿なことがあっていいのか。

 しかし、反面この当事者意識が薄い当事者も少なくありません。情報不足というわけではない気がします。かといって彼ら自身が非常に恵まれた環境にいるわけとも限りません。これは、なぜでしょうか?同じ集合に入っていながら、同じ集合に対して冷めた目で見る人、あきらめ ている人、興味がない人、自己責任だと言い放つ人。

 これは「大学」の大衆化が1つの原因かもしれません。大学を利用して、何かをする人が増えたからかもしれません(Ex:大学が職業訓練校になった。)。その結果「大学」そのものに価値を見出せなくなった。これは大学「改革」の弊害かもしれません。しかし、原因は他にあるのではないか?気付かぬうちに大学院生、大学生は分断化されているのではないか?

 同じ大学院生でいながら、グループが異なると全く違う考え方が生まれます。例えば、文系・理系の違いを考えてみましょう。文系・理系で区別 はしないと文科省はよく言うのですが、予算的実情が異なることは明確です。一方は潤沢な資金、ポストがいっぱい(それでも主たるものは競争的資金で、期限付きというのが多いのですが)一方は、研究の予算が存在せず、ポストがどうなるかさえ分からない。院生の置かれているバックボーンが異なります。

 これは一つの例で、たぶんソフトな例だと思います。都市―地方、情報量の多い大学―情報量の少ない大学、国公立―私立。様々な違いが、自然に分断として社会に組み込まれているのではないか。実は同じ問題を抱えているにもかかわらず、立場によって 、その受け方が違う。それが分断的な思考につながるのではないか。このような状況で、お互いの環境を乗り越えて対話をし、大学院生の環境を改善しようとする運動は生まれてくるのでしょうか。

 私は、だからこそ生まれるべきではないか。対話が少ない社会に視点が与えられるのではないかと思っています。各院生協議会だけでなく、大学院生の議論のすべての中心である全院協の役割は、分断社会―それも分断されていることに気づかない―に大きな気づきを与え、そしてすべての大学院生の現在置かれている危機的状況というメタ的な視点を与えることでしょ う。その中で、全院協の役割は大きいと考えています。全国の大学院生に対してアンケートを行い、そして要請行動をする。俯瞰的な視点と行動は、やはりネットワークがないと形成できません。

 最後になりましたが、1 年間支えていただき本当にありがとうございました。これからも全院協の活動を支えていただけると幸いです。これからも、この当事者による主体的活動は続いていきます。

2017年度 全国院生協議会議長 外山緑

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